健康モーニング79号
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10 KKCヘルスネットワーク No.79(2012. 1) メンタルヘルス(財)近畿健康管理センター顧問 医師 阪上 皖庸じようというものです。体の問題については医師や保健師が、心の問題については臨床心理士が担当します。電話だけでは解決が難しいと思われる場合は、それぞれの分野の専門家に紹介します。心の問題では上述の「こころのあんしんサロン」の利用を勧めたり、専門医による診断や治療が必要と判断されれば、精神科医に紹介するなどしています。 集団への対応 「こころのあんしんサロン」と「サポートダイヤル」は、働く人たちの心の健康を支える有力な方法なのですが、何しろ個人毎の対応なので時間がかかり、このため相談に応じられる件数が限られるのが泣き所です。働く人たちのメンタルヘルスを損なう原因の多くは職場のストレスだと言われます。だとすれば、冒頭に述べたハインリッヒの法則からも、職場にはメンタルヘルス不調に悩む人たちが、実際は「こころのあんしんサロン」や「サポートダイヤル」の手に余るほど多いに違いありません。もし職場のストレスの実態を知って、それを和らげることができるなら、多くの人が心の健康を損なわずに済むと期待できるのではないでしょうか。 このためKKCは、平成17年に厚生労働省主導の「職場環境等の改善によるメンタルヘルス対策に関する研究」で公表された「職業性ストレス簡易調査票」の実績を拠りどころとして、多くの働く人たちのメンタルヘルスを改善するためのシステム構築に取りかかることにしました。 まず、職場で「職業性ストレス簡易調査票」、あるいはそれを改変した「ストレス調査」を定期健診と同時に実施します。分析結果を個々の受診者に封書で直接お知らせして、どのようなストレスにどう曝されているかに気付いてもらい、ストレスを和らげるヒントを伝え、それに向かって自ら解決してもらえるよう支援します。自力でのストレス緩和や回避が難しい場合は、会社の産業医や地域の産業保健推進センター、或いは上述の「こころのあんしんサロン」や専門家への相談を勧めます。目下、このような仕組みを鋭意整えているところで、来期から活動を始める予定です。多くの企業や組織のご理解ご協力を切に願っています。※1 「こころのあんしんサロン」:KKCひこね健診クリニック,KKC栗東健診クリニックでカウンセラーによる個別カウンセリングを実施しています。※2 「サポートダイヤル」:人間ドックや血液オプション検査bPlusをご受診いただきましたご本人様およびそのご家族を対象とした、電話による健康相談を24時間年中無休で実施しております。無料でご利用いただけます。『お問合せは、KKC各事業部営業グループまでお願いいたします。』 心身一如 日本では、自殺者が年に3万人以上という異常な事態がもう14年も続いています。工場災害などでは、1回の重大事故の裏には29回の比較的軽い事故があり、またその背後には300回もの不具合や事故すれすれの「ヒヤリ・ハット」が起きているそうです。ハインリッヒの法則といわれるもので、心の大事故である自殺にもこの法則が当てはまるようです。つまり一人の自殺の裏には29人もの、うつなどのメンタルヘルス不調があり、その背後には300人もが色んな悩みや苦しみを抱えていると考えられるのです。 人は体の健康とともに、心も健全でないと幸せに生きることはできません。従来、KKCは働く人たちの体の健康に主眼を置いて、各種の健康診断や人間ドックに携わってきました。しかし職場でも職場外でも何かとストレスが多いこの世の中で、心の問題を度外視していては、働く人たちの健康を本当に守ることにはなりません。KKCは労働衛生機関として、体だけではなく心の健康にも腰を据えて関わるのが、本来果たすべき役割だろうと考えています。いわば「心身一如」、肉体と精神は一体であるとの仏教の教えを踏まえた心積もりです。ところが悩ましいことに、体の健康状態は集団健診や人間ドックで確かめることができますが、心の健康については、大勢の人を対象として比較的容易かつ確実にチェックする方法はありません。 個人への働きかけ そこでKKCは、ひとまず集団への対応よりも取り組みが容易な個人への働きかけとして、平成16年、滋賀県下に「こころのあんしんサロン※1」を立ち上げました。心の専門家である臨床心理士が、働く人たちの心の相談に応じ、カウンセリングを通じて相談に訪れた人を支えようという試みです。この取り組みは数多くの利用者に感謝され、また企業の人事労務担当者など多方面から賛同を得て、現在も頼られ甲斐のある活動を続けています。 しかし、この方法では、多くの働く人たちに広く門戸を拡げて対応することは難しいですし、また、「こころのあんしんサロン」を利用したくても、そこを訪れる時間的な余裕がない人もきっといるでしょう。うつに陥った人は、「相談に訪れる」という行動を起こすエネルギーすら乏しいこともよくあって、このような人には「こころのあんしんサロン」は敷居が高すぎるかもしれません。 このため平成21年、KKCはメンタルヘルス活動の第二弾として、外部の専門機関の協力を得て「サポートダイヤル※2」を始めました。働く人たちの心と体に関する色んな心配事や不安について、電話で相談に応No.3

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