健康モーニング79号
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15 KKCヘルスネットワーク No.79(2012. 1) Ⅱ.喫煙者の増減割合 2009年度から2010年度にかけて、喫煙者がトータルでどの程度増減したかを解析した結果、10代ではもちろん大幅な増加ですが、20代前半の男性でほぼ増減なし、女性ではやや減少(4.7%)、そして男女とも20代後半以降はほぼ同じ減少率(男性:5.7~7.0%、女性:6.0~9.0%)を示しました。20代後半以降では一貫して、喫煙者の減少傾向が認められることから、10代~20代前半の喫煙増加世代に対する働きかけの重要性がここでも示唆されました。Ⅲ.たばこ税の増税による効果 2010年に行われたたばこ税の増税による効果を検証するために、2008年度~2009年度、2007年度~2008年度のデータも解析し、2009~2010年度の結果と比較検証しました。 喫煙増減率では前2年に比べて30代以降の減少率が男女ともおおよそ倍になっており、トータルでの喫煙者減少に増税が大きく効果があったことを示唆しています。しかし、喫煙開始率の抑制には効果がほとんど認められませんでした。 禁煙移行率は2009年度~2010年度でどの年齢階層においてもそれ以前の結果に比べて大幅に増加しており、増税が禁煙を開始するきっかけになったことが示唆されました。 一方、喫煙再開率は減少傾向がみられるもののそれ程変化しておらず、増税の効果は少ないと思われます。【調査のまとめ】喫煙行動動態の検証喫煙開始率�年齢があがるとともに急速に低下し、喫煙開始のほとんどが20代前半までであった。禁煙移行率�男性では年齢階層による差は比較的小さく、女性では30代前半までが多い傾向を示した。喫煙再開率�年齢があがるとともに低下した。男性では30代まで、女性では20代前半までが比較的喫煙に戻りやすい傾向を示した。喫煙者増減率�10代で増加し、20代前半ではほぼ均衡、それ以降は一貫して減少傾向を示している。➡ 喫煙開始が多く禁煙群からの喫煙再開も多い10代~20代の若年者への働きかけが重要だということが示唆されました。 産業保健の対象ではありませんが、就労前の若年者が喫煙開始をしないよう学校教育などでの啓蒙がより重要と考えられます。2010年たばこ税増税の効果 2010年のたばこ税増税は喫煙者を減少させる効果を示しましたが、それは主に喫煙者の禁煙を促進する効果によるものであることが示唆されました。一方、喫煙開始率や、喫煙再開率には明確な効果は認められず、これらの喫煙行動の抑制には別の方策が必要であると考えられました。【最後に】 今回の調査は2007~2010年の期間を対象としており、同一人を長期間に渡り追跡したわけではありません。よって喫煙を開始した20代前半の方がその後、短期間で禁煙するのかもしくはどのくらいの方が何年吸い続けるのかなど解析出来ていない情報がいろいろと残っています。 また、2010年たばこ税増税により「禁煙には至っていないが一日当たりの本数が減っている」という効果もあると考えられます。次回の増税も喫煙行動動態いずれかの部分に作用し喫煙者減少へ効果をもたらすことは確実と考えます。 今回、解析出来ていない情報については今後さらに詳しい解析をすすめていきたいと思います。

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