健康モーニング79号
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21 KKCヘルスネットワーク No.79(2012. 1) と思って自分を責めてしまう方もおられるでしょう。「人からみて、どうか」ということではなく、あなたが、今の生活について、どのような気持ちでいるのかということが、とっても大切なことです。不安を抱え辛い状況で日々を送っているのに、「人からみると恵まれた環境で楽に暮らしているようにみえる」ということは、毎日、苦しさを見せない努力をして生活を維持しているということなのです。無理をしている自分をまず理解して、十分に配慮して頂きたいと思います。 同じ出来事を体験しても、苦しみの感じ方や、その苦しみがいつまで続くのかなども人によって違ってきます。また、いったん苦しみから抜け出したように思っていても、それが急にぶりかえすこともあります。人は、大量生産のロボットではないのですから、違いがあることが当たり前です。ご自身の「無理をしているかも」、「自分で気がつかないように気持ちに蓋をしているかも」、「自分の心の状態を考えないように頑張っていた」ということに気がつかれたら、まずは傷ついた自分を認め大事にすることを考えてもらいたいのです。 「KKCこころのあんしんサロン」では、カウンセラーが気持ちの整理をするお手伝いをしています。しんどい気持ちがあるけれども、どのように自分に配慮したらよいかわからないという方や、日々を穏やかな気持ちで過ごしたいのに何故かできないという方は、カウンセラーが一緒に考えます。「自分を大切に」という言葉は、標語のように安易によく使われる言葉ですが、本当は意味がよくわからないし、具体的にはどうしたらよいのかとなると、非常に難しいことだと思います。だからこそ、カウンセラーの助力が必要です。 最後に、今年は、昨年の大震災から、人々が少しでも安心できる生活に戻れる歩みの年になればと心より祈っています。本年もよろしくお願いします。 明けましておめでとうございます。昨年は、東日本における大震災により、日本全体が心を痛めた1年でもありました。被災地の方々は、もちろんのこと、震災により不安な生活を送っておられる方が、1日でも早く、安心で落ち着いた毎日が取り戻せるよう心より願っています。 私たちは、その人が過去に辛い経験をされていても、今の状況に不安要素がみられないとき、「もう大丈夫だ」と思ってしまいがちです。例えば、周りからみて経済的な不安もなく安定した穏やかな生活をしているようにみえるAさんですが、実は過去に大変辛い思いをされています。そんなAさんから、「過去の苦しみ」から抜け出せずに今もしんどいんだと伝えられたら、あなたは、どのように感じるでしょう?「しんどいのに、こんなに頑張って仕事を続けていたんだ」と驚く人もいれば、「そんな前のことをいつまで引きずっているんだ」と考える人もいるでしょう。よく、言われがちなのは、「もう済んだことなんだから」、「今の幸せをありがたいと思わないと」、「いつまでもクヨクヨしていたら、もったいない」、「もっと前向きに生きなさい」などなど。このような言葉は、たとえ善意から出ていても、かえってその人を傷つけてしまいます。他の人からみたら、「昔の心の傷」であっても、その人にとっては、「今も癒されていない心の傷」なのです。物理的な意味で「安心して過ごすことができる場所がある」というのは、重要です。しかし、その人が「今を穏やかな気持ちで過ごせていると感じているのか」ということが何よりも大切なことです。 これは、他者だけでなく、ご自身のことを考えるときにも当てはまります。「私は、人からみると恵まれているし幸せなはず」なのに、「不安や辛い思いを抱えていることは、良くないことだ」「自分を大切にするって??」KKCこころのあんしんサロンカウンセラー臨床心理士 高松 みどり

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