健康モーニング79号
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4 KKCヘルスネットワーク No.79(2012. 1) 安全神話が崩れた:これほんと?大阪市立大学大学院教授 圓藤 吟史 福島原子力発電所事故を捉えて「安全神話が崩れた」との報道がなされているが、正確な表現であろうか。その根拠として、「東京電力や政府は原子力発電所には事故が起きないように何重もの安全対策を行ってきたという態度を取ってきた。つまり、東京電力や政府の態度が「原発は安全だ」という「安全神話」を生んだ。そして事故が起こったのであるから安全神話が崩れた。との論法である。「安全神話」は、安全性に疑問を抱くこと、批判することを拒絶した不可侵のもので、現実の事象が隠蔽され、人々の考え方や行動が誤った方向に固定化された状態をさしている。 東京電力や政府をバッシングしても、事故原因を神話に帰結しても何ら安全性は高まらない。「事故は決してあってはならないもの」、「死亡災害の撲滅:絶対に許されることではなく...」(第10次労働災害防止計画)とはどのような意味か。理念?目標?信念?原則?スローガン?建前?事故対策を精神論に終わらせても何ら解決しない。 労働安全衛生マネジメントシステム(OHSMS)は安全対策として有効だろうか。OHSMSに関する指針が1999年に制定され、2006年に改正され、次第に普及してきた。東京電力も「原子力発電所の安全確保について」(2010.1福島県エネルギー政策検討会幹事会説明用資料)の中で、2004年に品質保表1 リスクの見積り手法(マトリックスを用いた例)負傷又は疾病の重篤度致命的重大中程度軽度負傷又は疾病の発生可能性の度合極めて高い5543比較的高い5432可能性あり4321ほとんどない4311リスク優先度4~5高直ちにリスク低減措置を講ずる必要がある。措置を講ずるまで作業停止する必要がある。十分な経営資源を投入する必要がある。2~3中速やかにリスク低減措置を講ずる必要がある。措置を講ずるまで使用しないことが望ましい。優先的に経営資源を投入する必要がある。1低必要に応じてリスク低減措置を実施する。

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