健康モーニング79号
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6 KKCヘルスネットワーク No.79(2012. 1) 小島祥一は、「なぜ日本の政治経済は混迷するのか」で第1幕はまったく問題ないと対策を拒み、第2幕では問題の存在は認めるものの矮小化し、第3幕では問題を先送りし、第4幕でどうしようもなく降参し、そして振り出しに戻ると述べている。岡本流にいえば、権威主義と属人主義が政官財を支配した結果ともいえる。 職場には、様々なハザード(リスクの原因、危険要因)が存在している。それらハザードを特定(認知)し、それらハザードによるリスクを可能性と重篤度から見積り、リスク低減のための取り組み、すなわち労働災害防止活動(ゼロ災活動)が求められる。私は、「見たくないことは見ない。聴きたくないことは聴かない。考えたくないことは考えない。」気持ちが想定外を生み、思考停止が安全神話を生んだと考えている。ハザードの多くは、ルール違反とスリップ、ミステイク、失念といったヒューマンエラーが原因である。 その対策には禁煙への行動変容ステージモデルがヒントになると考えている。その人(職場)が今どのステージにいるかを把握し、それぞれのステージに合わせた働きかけを行う。禁煙対策だけでなく、リスクマネジメント、ヒューマンエラーを減らす活動にも有効である。産業保健は、属人主義でなく属事主義で、情報を共有して、リスクの可視化を図り、リスクの本質を把握して、組織が一丸となって解決にあたる安全文化を醸成することが求められる。吉村 達彦: 想定外を想定する未然防止手法GD3. 日科技連出版社 2011岡本 浩一: 無責任の構造―モラルハザードへの知的戦略. PHP新書 2001小島 祥一: なぜ日本の政治経済は混迷するのか. 岩波書店 2007表2 圓藤が提案するマネジメントシステム 課題対策と活動 無関心期 「見たくないことは見ない。聴きたくないことは聴かない。考えたくないことは考えない。」という安全神話が対策を阻む。内外の具体事例を参考に想像力を働かせ、リスクの顕在化、リスクの可視化を図る。気づきの援助。関心期 リスクの存在は認めるものの矮小化する。組織として十分なコミュニケーションをとり、リスクの本質を把握し、リスクの重篤度、可能性の度合いからリスクを見積もり、リスクの共有化を図る。準備期改善の必要性は認めるものの、問題を先送りする。実効可能なリスク低減策を考え、本質安全を追求して、共有化を図る。実行期リスク低減措置を講じる。適切に実施されているか監査する。維持期事業者が労働者の協力の下にPDCAといった一連の過程を定めて、連続的かつ継続的に安全衛生管理を自主的に行う。全員参加の安全文化を醸成する。

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