健康モーニング 84
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 受診者を5歳毎の年齢階層に分けてある年度の喫煙率を算出します。次に、翌年度の1歳ずつ上の年齢階層の喫煙率を算出して、両者の差を解析します。具体的な例をあげますと、2009年度の30~34歳の喫煙率と2010年度の31~35歳の喫煙率を比較するわけです。こうしますと、特定の世代において1年間で喫煙率がどのくらい変化したかが明らかになります。 結果を図3にお示しします。女性の方が男性に比べて喫煙率の増減が少ないですが、これは喫煙率に2倍以上の開きがあるためだと考えられます。 男女とも、喫煙率が増加しているのは初年度が未成年者のグループだけで、後は一貫して減少傾向にあることがわかります。つまり、ある世代の喫煙率は基本的には20歳代初めの時点でほぼ決まってしまっているということです。先ほど書いた疑問、すなわち女性の40歳代以降で喫煙率が横ばいであるのは、禁煙する人が少ないからではなく、彼女らが20歳代の時の喫煙率が上昇していっていたからではないかと推測されます。実際、厚労省やJTの調査では、この世代が20歳代だったころは女性の喫煙率が上昇しつつあった時代にあたることが分かっております。 喫煙率を下げるという政策や活動において、どうしても禁煙指導や禁煙外来といった現在喫煙している方々への働きかけが中心となることは当然のことではあります。しかし、今回のデータからは、まだ喫煙していない未成年者への働きかけをもっと強め、喫煙を始めさせないようにすることは喫煙率を下げる上で大きな効果をもたらすであろうことが示唆されました。学校における喫煙の害についての教育や、職場においても若年従業員に対して喫煙しないように働きかける教育活動にもっと力を入れることが必要ではないでしょうか。 まとめ 2010年のたばこ税増税では、経済的な影響が大きく最も効果が期待できると考えられていた若年層ではほとんど効果がなく、むしろ中高年層での喫煙率の低下が認められました。少なくとも今回の程度の経済負担の増加は禁煙を促進する理由になりにくく、30歳代以降の元々禁煙を考えていた層に対してきっかけを与える効果にしかならなかったと考えられます。 男女とも喫煙率は20歳代初めにピークに達し、以降一貫して減少するパターンをとっています。このことは、ある世代の喫煙率は20歳代初めにほぼ決定されるということを示唆しています。喫煙率を大幅に下げるには、これまでの喫煙者への禁煙指導だけでなく、未成年者や20歳代前半の若年者が喫煙を開始しないような働きかけがより重要であると考えられます。図3 各年齢階層における喫煙率の1年後の変化 上段が男性の喫煙率変化、下段が女性の喫煙率変化。各年齢階層の5本のバーはそれぞれ左から2006→2007年度、2007→2008年度、2008→2009年度、2009→2010年度、2010→2011年度の喫煙率変化を表している。年齢階層は、それぞれの初めの年度における年齢を表している。図2 2006~2011年度の喫煙率の推移。(a)16~19歳、(b)20~29歳、(c)30~39歳、(d)40~49歳、(e)50~59歳、(f)60~69歳のデータ。青丸は男性の、赤丸は女性の喫煙率を表す。青赤の直線は2006~2009年度の喫煙率からの回帰直線を、その上下の点線は95%信頼区間を表す。11 KKCヘルスネットワーク No.84(2013. 9) 

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