健康モーニング 84
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健康へのトリオ -運動・栄養・休養-KKC近畿健康管理センター 顧問 医師 阪上 皖庸 すべての動物と同様、その一員である私たち人間は、食べ物の栄養からエネルギーを得て生きています。私たちの体は精巧に作り上げられていて、体を動かすエネルギーが足りなくても余り過ぎても、健康状態が悪くなります。そこで前号の第一楽章「運動」に続いて…、 第二楽章 「栄養」 有史以前の大昔からほんの百年ほど前までは、多くの人たちの生活は飢えとの闘いでした。飢えをしのいで生き延びるため、食べ物にありつけたときに、精一杯そのエネルギーを体に蓄える仕組みが、私たちの体に備わりました。先祖代々、何万年もの長い年月をかけて出来上がったシステム(倹約遺伝子仮説)です。蓄えられるのは、重さの割に大きいエネルギーを生む脂肪、健診でお馴染みのトリグリセライド(中性脂肪)やコレステロールです。 ところが今は、好きなときに好きなだけ食べられる、飢えと無縁の時代です。昔のように身を粉にして働く必要はほとんどないので、運動も不足しがちです。しかし長い年月をかけて培われてきた体の仕組みは、そう簡単には変わりません。体が必要とする以上の栄養を摂れば、余ったカロリーは皮下やおなかに脂肪となって蓄えられ、その脂肪を消費してしまう前にまた食べて、飲んで…、だから脂肪太りの人が増え、今やメタボが大はやり。 厚生労働省「平成23年国民健康・栄養調査結果の概要」(平成24年12月)などによると、成人肥満者の割合は、男性30.3%、女性21.5%。メタボはその予備軍を合わせると、40歳以上の男性のほぼ2人に1人、女性では5人に1人という、大変な人数です。 太り過ぎは単にスタイルの問題だけではありません。体に脂肪を貯めすぎると、栄養の使い方や蓄え方をコントロールするインスリンやレプチンというホルモンの働きが弱くなったり、不足したりします。その影響で血圧が高くなり、糖尿病や痛風に罹りやすくなり、動脈硬化が進み、脳卒中や心筋梗塞が増え、果ては認知症のリスクまで高まります。特に日本人には、少しの肥満で糖尿病になりやすく、少しの塩分摂り過ぎで高血圧症になりやすい遺伝的体質を持つ人が多いのです。ではどうすれば? まずお勧めしたいのは、「次の食事が待ち遠しくなるほどに、今の食事を食べる」こと。つまり昔、貝原益軒が言った通り、「腹八分」です。しかし食べたのが八分なのか九分なのか、おなかの中は見えませんし、「八分止まり」をいつも強いられると、食い足りない欲求不満が募るでしょう。食欲は三大欲望の一つです。個体保存、種族温存のために欠かせない欲望です。もし腹一杯食べたければ、食べてよろしい。その代り、次の食事が待ち遠しくなるほどに運動して、余分なカロリーを使い切ってしまうこと。 “空腹は世界中で最上の調味料である。”とは、16世紀スペインの小説家、ミゲル・デ・セルバンデスの名言です。同じものを食べても、お腹が減っているときの方が、減っていないときよりずっとおいしいですね。空腹を我慢したことに対する、神様のご褒美かもしれません。 次に生活習慣を見直すこと。今はみんな忙しい時代です。勤めを終えてスーパーなどで食材を買ってきて調理をし、食べた後は片付けも、というのは煩わしいので、特に独身者や単身赴任者は外食が多いようです。洋風の外食は一般に脂肪が多くて野菜が少なく、栄養が偏りがちです。だからトクホやサプリで補っているという方もいますが、これらの健康食品には「イワシの頭も信心」以上の効果が、医学的に証明されていないものも多いのです。ご注意ください。 家で食べる場合も、手軽でハイカロリーのファストフードで済ませたり、残業で夕食が遅い人も多いでしょう。遅い夕食後は体をあまり動かさないで、カロリーを体に貯めたまま眠ることになり、そのエネルギーはやはり脂肪として体に蓄えられます。 脂肪は朝食に含まれる糖分ほどには素早くエネルギーに変わりません。だから翌朝、おなかが空かず朝食を抜くと…、午前中はカロリー(糖分)不足で、体8 KKCヘルスネットワーク No.84(2013. 9) 

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