健康モーニング 84
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も頭もシャンとしないのです。その上、大昔の飢えの記憶を受け継いでいる脳が飢えを防ごうとして、その後の昼食や夕食の栄養の吸収が普段より高まって、却って太ります。朝食を食べない人は食べる人に比べて、4~5倍も太りやすいといわれます。 食べ方についても考えてみましょう。まず始めにカロリーが少ない野菜をたっぷり、次いでスープでおなかを膨らませ、その後は主におかずを食べて、最後に足りない分を控えめにご飯で締めくくる、これが食べ過ぎを防ぐ一法だといわれます。また、「食欲の科学」の著者、桜井武・金沢大学医学部教授によると、おいしいものを「おいしい」と感じながら食べることが大切だそうです。だからテレビを見ながら、新聞を読みながらの「ながら食い」は禁物です。 食べる喜びやおいしさを感じながらゆっくり食べると、脳(視床下部)の満腹中枢が血糖値の上昇を感知して余分な食欲を抑え、体が必要とするカロリーを摂った頃に満腹感が得られます。反対に、早く食べると血糖値の上昇が間に合わず、脳の満腹中枢が満腹状態を感知する前に、必要以上の栄養を摂ってしまいがちなのです。 よく噛んで食べることも大切です。食べ物を咀嚼しているという感覚は、歯根膜やあごの筋肉から三叉神経を経て脳に伝えられ、これによっても満腹感が得られ、余分な食欲が抑えられます。仕事に急かされて、ついせわしなく早く食べる方、ご用心ください。 ダイエットに励む方も、一方では増えています。これは結構なことなのですが、ダイエットを始めると、飢えに備える倹約遺伝子の働きで、基礎代謝量(生存に必要な最低限のカロリー)が低下します。つまり生きるために必要なエネルギーの消費が、節約モードになるのです。こんなとき、ダイエットに疲れて、或いは気が緩んで食生活が乱れると、倹約遺伝子はここがチャンスとばかり、エネルギーをできるだけ多く脂肪として体に蓄えようとします。このため基礎代謝がさらに低下して脂肪が蓄積し、ダイエット前より却って太ってしまうということになりがちです。倹約遺伝子を刺激して逆効果にならないよう、じっくりと時間をかけて緩やかにダイエットに取り組むこと、これが肝心です。 血圧を高めやすい塩分の摂り過ぎにもご注意ください。塩分を多く摂ると、血管壁を構成する細胞に、血液中のナトリウムが入り込みます。細胞はナトリウム濃度が一定でないと壊れますので、この濃度を薄めるよう水分が細胞に引き込まれ、細胞は膨らみます。この状態では細胞内にカルシウムイオンも増え、これが血管を収縮させて血管壁が厚くなり、血液が流れる血管の内腔が狭まって血流の抵抗が増し、そして血圧が高くなるのです。 WHO(世界保健機関)の研究では、1日に摂る食塩量を6gに減らせば、脳卒中をゼロにできるそうです。ところが日本人は平均1日ほぼ11gもの食塩を摂っています。食事の洋風化が進んでいますが、日本人の食事はまだ和食が主体です。和食は脂肪が少なく食物繊維が多く、コレステロールも減らせる健康食で、欧米人にも好評ですが、反面、ご飯は塩気と相性がとても良く、つい塩分を摂り過ぎます。そのせいか、高血圧の日本人は4,000万人にも上るそうです。 特に全体に塩気が染みている煮物、干物、漬物、汁物などは控えめにしましょう。素材の風味を生かした薄味の調理、表面にだけ醤油を付けた刺身や寿司など、舌に塩気のうま味を感じる割には体に入る塩分が少ないものがお勧めです。野菜には血圧を高めるナトリウムを、腎臓から追い出す働きのあるカリウムが豊富です。特にビタミン類も多い生野菜は沢山召し上がってください。ただし塩気のあるドレッシングやトッピングは控えめに。つづくあなたの食生活は?下記の文で、当てはまる項目が多ければ、要注意。1早食いのほうだ。2満腹しないと物足りない。3好き嫌いが多いほうだ。4濃い味付けが好きで、薄味の料理は物足りない。5魚より肉をよく食べる。6野菜や果物はあまり食べない。7ファストフードやでき合いのものを、よく食べる。8外食が多い。9よく朝食を抜く。10夕食が夜9時以後になることがよくある。11お酒は好きで、晩酌をほとんど欠かさない。12栄養のバランスなど、日頃あまり考えていない。9 KKCヘルスネットワーク No.84(2013. 9) 

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