健康モーニング No.85
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健康へのトリオ -運動・栄養・休養-KKC近畿健康管理センター 顧問 医師 阪上 皖庸 第3楽章 「休養について~特に睡眠を中心に~」 健康を保つのに大切な3大要素の一つ、それが「休養」です。これには体だけでなく、心の休養も含まれます。なぜなら心は脳に存在し、脳は体の一部だからです。そして休養の第一は「睡眠」。だからここでは睡眠に的を絞ります。 「なかなか寝付けない」、「夜中に目がよく醒める」など、睡眠の悩みを抱える人はほぼ5人に1人。あなたはどうでしょうか。色んな病気で睡眠障害が起きますが、睡眠障害が高血圧、糖尿病などの生活習慣病やうつ病を起こしたり悪くしたりもします。問題は病気に限りません。車の衝突による傷害や死亡事故の20%近くが、ドライバーの眠気に関連するとの調査結果もあります。 睡眠に問題がある人の活動力や生産性は、そうでない人に比べて低く、医師に受診する率も高いことが分かっています。会社では社員の睡眠障害が業績悪化の隠れた要因ともなる恐れもあります。社員の健康とともに会社の活性化という点からも、会社の経営層や産業保健職は、社員の睡眠の質に関心を持って頂きたいと思います。 睡眠が不足すると、交感神経の働きで血圧が上昇しがちです。残業で睡眠時間が短くなると、その翌日の血圧は通常勤務時(睡眠8時間)に比べて高くなります。不眠が続くと高血圧症を起こすリスクが高まります。実際、高血圧患者の2、3人に1人は不眠の傾向です。日本人の推定2~3%は眠りが度々中断するSAS(睡眠時無呼吸症候群)だとされますが、本態性高血圧症の患者ではSASの人が凡そ30%もいて、SASは高血圧症の合併症というより、原因として重要視されています。 また糖尿病の患者では、入眠困難(寝付きが悪い)・中途覚醒(夜中によく目が醒める)・早期覚醒(夜中に目が醒めて眠れない)、熟眠障害(床に就いている時間は充分なのに熟睡感がない)のどのタイプの不眠も、健康人より多いといわれます。不眠症の糖尿病患者に睡眠剤を飲ませると、糖尿病の指標であるHbA1c値が下がり、糖尿病が改善するとの報告もありました。不眠が糖尿病を悪化させ、糖尿病とその合併症が不眠を悪化させるのです。この悪循環を軽く見てはいけません。 このように、高血圧、糖尿病、脂質異常症など、何か生活習慣病を持つ人では不眠症の割合が高く、不眠症の人はそうでない人より生活習慣病を持っている率が高いですし、また、生活習慣病のある人はない人よりうつ病の割合が高く、うつ病のある人はない人より生活習慣病の割合が高いことも明らかです。うつ病の人は大抵不眠です。 ところが実際は、不眠に悩む生活習慣病患者の半数以上は医師にその悩みを訴えず、不眠を放っていたり、寝酒で対処しているようです。生活習慣病と不眠、うつの間には相関関係があって、不眠を解消できれば原因疾患の改善も期待できるのです。久留米大医学部精神神経科・内村直尚助教授)は、主治医は生活習慣病患者に一言、「よく眠れていますか」と尋ねることが大切だと言われます。 ではどうすれば快く眠ることができるのでしょう。大切なのは、毎日の生活のリズム(サーカディアンリ12 KKCヘルスネットワーク No.85(2014. 1) 

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