健康モーニング No.85
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KKCにおける研究活動管理体制についてKKC近畿健康管理センター 医師 礒島 康史 近畿健康管理センター(KKC)が実施しております職域定期健康診断、人間ドックには毎年数十万人の方が受診されています。この、膨大な健診データは現在の日本人の健康状況を反映する貴重な資料であり、健診データを解析して学会・論文誌に発表することは、公衆衛生・予防医学への大きな貢献になると考えております。 私どもは、健康診断・人間ドック事業だけでなく、健診データを活用した研究活動も皆様の健康増進にお役に立てると考え、職員の研究発表を推進しております。 その一方で、非常に重要性のある個人情報である健診データを使わせていただくにあたっては、受診者の皆様方や事業所様がご不安に思われぬよう、データの取扱いについては細心の注意が必要です。また、不適切な解析方法は誤った結論につながり、世間に誤った健康情報をお知らせすることになります。そのため、健診機関が行う解析であっても、大学などの学術機関に劣らないレベルが要求されるものと考えております。 そこで、KKCでは2011年に研究調査活動規程の制定と倫理審査委員会の発足を柱とする研究活動の管理体制を構築し運用しております。本項では、この研究活動管理体制についてご説明申し上げます。 KKCにおける研究活動管理体制の概要を模式図にまとめたものを図1に示します。 KKC職員が研究活動を行おうとする場合、まず医療統括本部に研究計画申請書を提出します。この研究計画申請書には、研究の目的、解析方法、解析に使用する健診データの内容、解析中の健診データの取扱い方法とデータ管理責任者の名前などを記載します。医療統括本部は研究計画をとりまとめて毎年6月に開催される倫理審査委員会(写真参照)に提出し、審査を依頼します。もし、研究計画が研究調査活動規程に照らし合わせて問題がないと容易に判定できる場合は、倫理審査委員会委員長、副委員長の合議により倫理審査委員会に諮る前に研究計画に許可を与えることができます(迅速審査)。この場合でも、その後に行われる倫理審査委員会で迅速審査における許可に問題がなかったか改めて審査を行います。 倫理審査委員会は8名の委員からなります。医学・疫学の専門委員2名、個人情報保護や契約、法律等の専門委員4名、外部委員2名という構成になっております。 倫理審査委員会では、研究計画を以下の点について検討し、研究を実施していいかどうか審査いたします。1. 研究調査活動規程に記載されている、関連法令や規程(注1)を逸脱していないか。研究活動が受診者の皆様方の権利を侵害していないか。2. 研究目的が適切で、公衆衛生、予防医学、産業医学への貢献につながるものであるか。また、正しい結論が得られるよう適切な手法がとられているか。3. データの管理体制は充分か。解析用のデータは、健康情報センターから受け取る段階で個人が特定できないよう匿名化されていますが、それでも個人情報と同レベルでの厳しい管理を要求しています。また、X線フィルムや心電図などの非デジタルデータについては、個人情報と切り離すことができないため、より慎重な取扱いの手順が要求されます。図1 KKCにおける研究活動管理体制の模式図研究活動管理において最も重要なのは外部委員を含む倫理審査委員会です。倫理審査委員会は、研究計画の審査・承認、研究活動経過の監督だけでなくKKCの研究活動の方向性についても指導・助言を行います。研究活動管理において中心となる組織が医療統括本部です。倫理審査委員会の事務局であり、研究担当職員への直接の指導はここが担当します。研究に関する外部からのお問い合わせにも医療統括本部が対応いたします。図116 KKCヘルスネットワーク No.85(2014. 1) 

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