健康モーニング No.85
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子宮頸がんワクチン接種 副作用の方が怖い:これほんと?大阪市立大学大学院教授 圓藤 吟史 厚生労働省は、2013年6月14日に子宮頸がんワクチンの積極的な接種勧奨を一時中止するよう勧告した1)。この措置は、定期接種の中止でもないので、市町村や医療機関では対応に苦慮し混乱が生じている。どのような事情だろうか。 子宮頸がんとは 子宮頸がんの全国推定年齢調整罹患率は31.7(1985年日本人モデル人口で調整した女性10万人あたり2008年の1年間に31.7人が罹患)で、年々増加し、年齢階級別でみると14歳までが0.0に対し、年齢とともに増加し、30~34歳が71.9となっている2)。子宮頸がんの全国年齢調整死亡率は2.7(1985年日本人モデル人口で調整した女性10万人あたり2012年の1年間に2.7人が死亡)となっている3)。 HPV感染が原因 子宮頸がんは、ヒトパピローマウイルス(HPV)の持続感染が原因とされ、わが国の子宮頸がん患者から16型あるいは18型(HPV16/18)が50~70%検出されている。HPV感染はヒトヒトの接触感染で性感染症の一つである。 子宮がん検診 子宮がん検診は、1982年から市町村が主体となって30歳以上の女性を対象に子宮頸部の細胞診と、問診により子宮体がんの有症状者に子宮体がんの細胞診を行ってきた。異形成病変での発見が可能で、治療成績は良い。その後、20歳以上の女性に2年に一度実施することが推奨された。しかし、20歳以上の女性の過去2年間の受診率は32.0%4)である。 子宮頸がん予防ワクチン ワクチンは2社から販売されている。英国グラクソ・スミスクライン社の商品名サーバリスクはHVP16/18の2価ワクチンとして開発され、わが国で2009年10月に承認された。米国メルク社の商品名ガーダシルはHPV6/11/16/18の4価ワクチンで、わが国で2011年8月から販売された。 有効性は 世界での臨床試験でHPV16/18感染が94%抑えられ、子宮頸部上皮内腫瘍が96%抑えられると報告されている5)(表1)。 わが国の子宮頸がん患者からHPV16/18が50~70%検出されていることから、もしすべての女性にワクチン接種した場合、HPV感染は47~66%抑えられ、子宮頸がん罹患率は14.9~20.9低下し、死亡率も1.3~1.8低下すると考えられる。10万人での生涯死亡は、平均寿命をかけて109~153人少なくなると見積もられる。 そのため、2011年1月から緊急促進事業として、HPVに未感染と推定される小学6年生から高校1年生の女性を対象に3回接種することとなり、予防接種法の改正で2013年4月から定期接種となった。表1 7つの無作為比較試験のメタアナリシス5)接 種 群対 照 群リスク比(95%信頼区間)発 症合 計発 症合 計HPV16によるCIN2+311,6179311,3230.04(0.01-0.11)HPV18によるCIN2+211,8492611,7160.10(0.03-0.38)6か月以上のHPV16持続感染317,3324757,1630.06(0.04-0.09)6か月以上のHPV18持続感染97,0561936,9520.05(0.03-0.09)CINとは子宮頸部上皮内腫瘍で、CIN2+は中等度異形成以上のもの4 KKCヘルスネットワーク No.85(2014. 1) 

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