健康モーニング No.85
8/24

Ⅹ線撮影装置デジタル化の遷移とその恩恵医療統括本部 医療技術部 前々回より3回に分けて、KKCが取り組んだ画像診断技術について報告しています。今回は第3回目です。第1回 健診機関に課せられた課題第2回 比較読影の重要性と最新技術(経時差分画像)第3回 専門医による遠隔画像診断 遠隔画像診断とは? 遠隔画像診断とは、その言葉から容易に連想できるように、離れた場所にいる医師が画像診断をすることを意味します。現在の技術を持ってすればさほど難題ではなく、通信と対応する機器を用意すれば可能という判断が一般的であると思います。 しかし診断という行為には、医師法や医療法という法的な縛り、また不特定多数が利用する通信という技術を利用することから個人情報保護法や、関連する規則やガイドラインなども横断的に解決した仕組みも必須です。 また法的な一面のみならず、受診者に有益となるような診断精度を含め「質と安全」が担保できることがさらに必要で、これらを総合的に具備しなければ意味がありません。表1 医の倫理の基礎知識「遠隔医療」 遠隔画像診断の歴史 インターネット・バブル(通称ITバブル)と称された1990年代後半から2001年ぐらいまで、インターネット関連企業への実需投資や過剰な株式投資が進み、医療面でも国策として離島やへき地を対象にモデル事業が成立し、離島の診療所と大病院との間に専用回線が敷設され、運用が開始されました。これを期に画像のみを専門で診断する専門医師や、読影画像診断会社なども誕生しました。あくまでモデル事業であり、自治体などからの予算がつかなくなると中止するなど、ITバブル崩壊後は通信回線の維持コストなども影響して成長性が期待されず、始めてしまった離島対策以外はしばらく進展がありませんでした。 しかしその後、医療機器の発達が目まぐるしく、特にCTやMRIなどは、受診者一人あたりの診断画像を大量に生成し、CTについては今や全世界の設置台数の3分の1以上を占めるようにもなり、大病院でも院内の医師では画像診断が追いつかなくなるなどの問題が生じてきました。 ここであらためて、遠隔画像診断が注目され、いろいろな特徴をもった遠隔画像診断ビジネスが展開されるようになりました。 健康診断の遠隔画像診断への課題 遠隔画像診断ビジネスも今や国内で100件を越えるレベルにまで成長しました。導入にあたっては新たに独自の手段を講じるよりは、サービス提供事業者と契約したほうが「質と安全」が確保できることは間違いありません。 しかし健康診断機関としては課題がありました。そもそも病院などでは治療を主体とする診療を遠隔診断に求めて成長してきたため、健康診断のような大人数の規模に対応できないことや、またCTやMRIを中心とした事業展開が多く、健康診断では大半を占める胸部単純撮影や胃透視撮影などを診断できる事業者が少なく、サービスを利用したとしても年間100万人規模から想定すると全体の1割以下しか対応ができないものでした。 さらにコスト面でも健常者が9割を占める健康診断では、独自の画像診断費を構築してきたこともあり、胸部X線検査や胃部X線検査を専門医に画像診断依頼することはコスト面で適わず、事業者の門戸をたたいても、到底実現できる価格ではありませんでした。 現有財産!?の活用 遠隔画像診断を提供する事業者のほとんどは、画像を送受信して結果レポートを作成するシステム面と、診断する医師がセットになっているものが大半です。それ遠隔医療の日本医師会指針• 継続して安定したシステム運用が可能である• 依頼医側、専門医側の双方において患者個人情報の保護が担保されている• 診断し、レポートを作成した専門医を特定できる• 診断までの時間や日数に期限をつけて運用できる• 診断に必要な追加情報が生じたら、適宜に依頼医・専門医間の連絡を確保できる• 双方の役割、責任、費用負担など明記した公的文書を交す• 定期的に実績と評価を行い、専門医側にフィードバックする機会を設ける努力を怠らない8 KKCヘルスネットワーク No.85(2014. 1) 

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です