健康モーニングNo88
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 PACSとは医用画像システムのことで、レントゲン写真などを保管するシステムです。このシステムは病院を中心に構築されてきた歴史があり、病院などでは電子カルテなどで連携して運用するのが主な考え方です。しかし健診機関では画像情報量は大学病院並みに多い割に治療行為がありません。つまり診療記録や投薬などを行なわないため電子カルテが必要なくPACSを中心に健診で発生するすべての情報を保管管理できるように機能拡大を図りたいと考えました。 構築したクラウド型PACSには次の5つのポイントがありますので、ひとつずつご説明します。 1つ目はクラウドデータ保管です。クラウドのデータは国内2拠点に分散保管したうえで、各拠点でも2重化し、計4重の保管体制を確立しており、BCP面※1でも有効性が評価できます。さらに送信するファイルは暗号化した後、秘密分散法によってバラバラの破片にした状態でクラウド上へ送信するため、万が一ファイルの断片を取得されてもそれ自身は意味を持ちません。このことにより高いセキュリティを実現しています。 2つ目はガイドラインの遵守です。個人情報保護法を元にした、各省庁からガイドラインが作成されています。俗称として3省4ガイドラインと呼ばれています。お客さまの情報をお預かりすることを前提とした場合に、まずはこれらの基準に担保されていることが前提です。  3つ目はマルチモダリティです。こちらは、当日検査したものすべての一覧表示ができるもので、健診のみならず紙情報(PDF)や過去の精密検査結果データも含めて診断に必要な情報を一読できることです。 また、ドックなどは当日面談として受診者にわかりやすい説明ができることも付加価値としてのねらいです。 4つ目はID連携技術です。保険診療領域と健診領域の境界管理を構築し、双方で発生する同一受診者のID連携や、地域医療連携の紹介先から返却される診療情報についても、画像同様、維持管理できる機能を持つことです。さらに本年施行されたマイナンバーに付帯する事項について生涯1IDというのが本来理想ではありますが、現時点では複数のIDが乱立しているのが現状であり、そこでどのようなIDであってもマルチID連携として連携すれば以後は同じIDとして認識するような仕組みを構築することです。 5つ目は地域医療連携機能です。これまで結果が後日であることで、治療行為が本来必要な受診者への動機付けが出来てこなかったことを課題と考え、KKCでは健診当日のなるべく早い段階で結果を出して、当日のうちに受診者を必要な医療へと誘導できるように仕組みを構築しました。重傷化する病態にある受診者を救えることが使命でもあると考えています。 今回ご説明したクラウド型PACSによるマルチモダリティと個の情報管理によって、健診機関流のデータヘルス計画を進めつつ、側面としてPHR※2のための源泉を蓄積しておくモデルを構築しました。生涯健康管理の一助として予防医学を含めた地域医療連携モデルを構築することで、我々のできる形でお客様に貢献したいと考えています。KKCが考えたクラウド型PACSの導入と将来像について※1 BCP面:災害などリスクが発生したときに重要業務が中断しないこと※2 PHR:パーソナルヘルスレコードの略称で、個人が生涯にわたり自分自身に関する医療・健康情報を収集・保存し活用できる仕組み6 No.88(2016. 1) 

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