健康モーニングNo82
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そのような場合には心臓超音波検査などの精密検査で確認する必要があります。 心筋梗塞 心筋梗塞を起こすと、24時間以内に3人のうち1人が死亡するといわれます。健診で見付かるのは運よく心筋梗塞から生き延びて、心電図でその傷跡を示す所見がある人たちです。傷跡を残した古い心筋梗塞を陳旧性心筋梗塞といいます。高齢者を除いて女性では非常に稀ですが、男性では千人に1人か2人ほどに見付かります。 心筋梗塞は心筋に栄養と酸素を送る冠状動脈が動脈硬化のせいで塞がって、その動脈が分布する範囲の心筋が死んでしまう(壊死に陥る)病気です。壊死の範囲が小さければ命は大抵助かりますが、壊死部の心筋は傷跡(瘢痕)となり収縮力を失います。傷跡が小さくてその周りの心筋で収縮力を補える場合は、元通り元気になりますが、傷跡がある程度以上に大きく、周りの心筋が収縮力を十分肩代わりできないと、動悸や息切れ、脈の乱れなどの心不全症状で苦しむことになります。また、一度心筋梗塞を起こした人は、再発の危険も高まります。このため健診時の心電図で陳旧性心筋梗塞の波形があれば、左室肥大の場合と同様、多くは「要医師指導」や「要精密検査」と判定されます。 心筋梗塞の原因は動脈硬化ですから、心筋梗塞を起こさず、また心筋梗塞を一度経験した人は再発を防ぐために、左室肥大の項で述べたと同じ注意が必要です。血圧が高い人は心筋梗塞を起こす率が高いですし、肥満や糖尿病のある人も心筋梗塞の予備軍です。また心筋梗塞の前触れとして、狭心症発作を起こす人もいます。これは動脈硬化を起こした冠状動脈が一時的に塞がって、血液の流れが塞き止められ、胸や時には肩、背中や胃の辺りなどに突然、死の恐怖に襲われるほどの強い痛みが起き、数分で収まる状態です(高齢者や糖尿病では痛みを感じないこともあります)。運動後によく起こりますが、夜明け方などに寝床の中で起きるタイプもあります。このような症状は、たとえ数分間で収まっても、心筋梗塞の重大な予告ですから、すぐ医師に受診することが大切です。【註】心筋梗塞が起きると、心電図には特徴的な波形が現れます。不整脈もよく起こります。特に心室細動という不整脈が起きれば、心筋は収縮力を失って血液の流れが止まり、非常に危険な状態に陥ります。しかし当初の24時間を生き延びることができれば、急死の危険は少なくなり、時間の経過とともに波形が変化します。 発作後数分の超急性期に心電図を撮れば、心筋梗塞の部位に面した電極からの誘導波で背の高いT波(超急性期T波)が現れます。2~3時間後には、図2に示すようにST部分が上昇し、同時にR波の高さが低くなり、やがて異常Q波や下に凹んだ左右対称のT波(冠性T波)が現れます。このような変化の激しい急性期を過ぎれば、徐々にSTの上昇は収まって基線に近づきますが、異常Q波や冠性T波はかなり長く残り、時には何年間も続きます。だから健診時の心電図で見るのは、大抵は陳旧性心筋梗塞を示す異常Q波と冠性T波です(従ってKKC健診結果報告書の心電図所見欄に「異常Q波」と「陰性T波」とが記されていれば、「陳旧性心筋梗塞」が強く疑われます)。 時にはST上昇も長く続くこともありますが、そのような場合は心室瘤(収縮期に壊死部が心室の内圧上昇によって外側に膨れる状態)が疑われます。また、小さな心筋梗塞では異常Q波が現れないこともあります。この場合は心筋梗塞の診断が難しく、その疑いがあれば臨床症状やCK、トロポニンTなどという検査結果を総合して診断します。おわり図2新しい梗塞陳旧性心筋梗塞V₄誘導QQSTSTTTPP7 KKCヘルスネットワーク No.82(2013. 1) 

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