I.一般検査

12) 胃部X線検査(図表J1-8-13

受診者数:143,715人(男性110,679人、女性33,036人)
有所見率:2.6%(男性2.7%、女性2.2%)

 胃X線検査での(十二指腸球部を含む)異常出現率は一般に年齢階層が高くなるほど増加します。内訳(項目別所見内訳・図表6-6)に示す通り、男性で最も多いのは「隆起」の4.1%で、このほとんどは良性の胃粘膜ポリープです。第2位は「変形」の1.7%で、女性も同じく第2位の0.7%ですが、この多くは十二指腸球部の変形です。これは十二指腸潰瘍の瘢痕(きず跡)を示すことが多いのですが、バリウムの溜り具合から一見そのように見えることもあって、治療を要する十二指腸潰瘍は少数です。
 女性では「隆起」の出現率は、前年よりなお高い9.9%で男性の2.5倍近く、他の11所見の合計を上回ります。良性の胃粘膜ポリープは正常の胃粘膜(胃底腺領域、主に胃の上半分)に生じることが多く、女性では男性より胃粘膜が正常な人の割合が高いせいだと考えられます。胃がんは萎縮した胃粘膜から生じます。正常胃粘膜から生じた良性の胃粘膜ポリープを持つ人では、胃がんになる恐れはむしろ少ないといえるでしょう。
 男女とも出現率第3〜5位の「粘膜乱れ」は「集中像」とともに、主に胃潰瘍、或いはその瘢痕(きず跡)を示唆しますが、「辺縁不整」や「粘膜粗大」と同様、稀には胃がんの徴候であることもあります。「ニッシェ」(胃粘膜の掘れ込み)の多くは胃潰瘍そのものですが、時に陥凹型胃がんであることもあり、精密検査が必要です。「粗大皺襞」(太い粘膜ひだ)はほとんどが正常範囲内の異型(正常亜型)で、悪性例は稀です。なお、憩室は胃の入り口付近にできた生まれつきの袋状の膨らみであることがほとんどで、大腸の憩室のように炎症を起こす危険はほとんどなく、無害です。

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