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第6回日本禁煙学会学術総会 平成24年4月 仙台市

定期健康診断にみる喫煙行動動態の推移と2010年たばこ税増税の効果の検証

〇礒島康史、寺田哲也、池田麻里子、西村嘉高、富一弘、木村隆
財団法人 近畿健康管理センター

【背景】

 職域や自治体などにおける喫煙対策の策定やその効果の検証には喫煙行動の傾向の解析が必要である。本演題において、我々は連続する2年度の職域健康診断の問診結果より喫煙行動の動態の傾向を推測した。また、この解析手法を用いて2010年のたばこ税増税の効果についても考察を行う。

【方法】

 2005年度から2010年度までの当財団の定期健康診断の結果の中から、2005年度〜2006年度から2009年度〜2010年度にいたるまでそれぞれ2年連続で健康診断を受診した受診者の結果を用いた。問診票に記された喫煙行動、すなわち喫煙をしたことがない(非喫煙者)、習慣的に喫煙している(喫煙者)、かつては喫煙していたが現在はやめている(禁煙者)の区分が次年度にどう推移したかを解析した。
 なお、本研究は当財団倫理審査委員会の許可を得て実施されており、健康診断結果は当財団の研究調査活動規程に則り匿名化した状態で解析を行った。

【結果と考察】

 2009〜2010年度のデータで喫煙行動の動態を解析すると以下の傾向を示した。
1.非喫煙者が翌年度に喫煙を開始する割合(以下喫煙開始率とする)は、男女とも10代〜20代が高く、30代以降はほぼ一定の値(0.1〜0.3%)であった。
2.喫煙者が翌年度に禁煙する割合(以下禁煙移行率とする)は男女ともに20代〜30代が高いが、他の年齢層においても比較的高値(8〜10%以上)を示した。
3.逆に禁煙者が翌年度喫煙を再開する割合(以下喫煙再開率とする)は、男女ともに10代が最も高い割合を示して加齢とともに低下していく傾向を示した。50歳代以降では3〜5%であった。
4.全体としての喫煙者の増減を年齢階層別に解析すると、10代では増加しているが20代前半でほぼ増減が拮抗し、それ以降の年齢階層ではおおよそ男女ともにおおよそ1年間で6〜8%ずつの減少を示した。
 10代から20代前半にかけては喫煙開始率・喫煙再開率ともに高く全体としても喫煙者が増加する唯一の年代層であった。これら若年者層に対するより一層の啓発・禁煙支援活動が必要と考えられる。
 たばこ税の増税が行われた2010年をはさむ2009-2010年度のデータとそれ以前の2年間のデータ(2007-2008年度および2008-2009年度)を比較したところ、禁煙移行率が著明に増加しており、たばこ税増税の効果が認められた。
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