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第52回近畿産業衛生学会 平成24年11月 和歌山市

健康診断結果から見た労働者の睡眠と生活習慣の解析

〇阿部志津香、寺田哲也、嵯峨裕子、富一弘、谷口俊樹、礒島康史、阪上皖庸、藤田正憲、木村隆
財団法人 近畿健康管理センター

【目的】

 我々は、これまでに睡眠が健康に及ぼす影響について報告してきた(第51回近畿産業衛生学会、第85回日本産業衛生学会)。今回は睡眠時間に関連する因子についてさらに解析を進めた。

【方法】

 1)過去2回の発表と同じく平成22年4月から平成23年3月に当財団で健康診断を受けた、590,418件(男性398,736名、女性191,682名) のデータを当財団の研究調査活動規定に則り匿名化した状態で解析を行った。自覚症状に関する問診項目のうち、ストレス系の項目(なかなか眠れない、イライラしやすい、不安感がある、ゆううつである、食欲不振)へのチェックの有無と睡眠時間との関連を解析した。
 2)1)で用いたデータの中から業種の特定できる、40歳台の8業種(製造、運輸・郵便、卸売・小売、金融・保険、教育・学習、医療・福祉、サービス他、公務他)を男女別に500人ずつ計8,000人無作為に抽出し、睡眠時間と業種の関連を解析した。

【結果】

 1)睡眠時間別にストレス系問診5項目の該当数を比較したところ、睡眠時間が短い方が該当数が多い傾向が見られ、特に6時間未満群で顕著であった。個々の問診項目についても同様の傾向が見られた。一方、精神疾患・自律神経疾患の治療群割合と睡眠時間との相関では、7時間以上睡眠の群で治療中の受診者が多い傾向が認められた。
 2)業種別の睡眠時間の比較では、男性では運輸・郵便、サービス他で睡眠時間6時間未満の割合が40%を超え、女性では上記2業種に加えて製造、金融・保険、医療・福祉の3業種で睡眠時間6時間未満の割合が40%を超えていた。

【考察】

 睡眠時間の短い群では、ストレス系の問診項目の該当数が増加する傾向が見られた。横断研究の為どちらが起因か特定はできないものの、睡眠時間と労働者のストレスとの間に相関関係が見られた。
 職場におけるメンタルヘルス対策として、睡眠時間を問診項目として活用することは有用であることが示唆された。
 業種別の睡眠時間では、深夜勤務や交代勤務の有無等、勤務形態の影響が示唆された。

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