II.血液検査項目(機能別)について

10) 膵機能検査(図表J1-9-10):血清アミラーゼ

受診者数:79,446人(男性55,913人、女性23,533人)
有所見率:1.4%(男性1.4%、女性1.5%)

 「有所見」は精密検査が必要な血清アミラーゼ高値を指しますが、実際にはその多くは個人の生理的変動内の値で、それを超えて明らかに病的な高値を示す例はほとんどありません。急性膵炎や慢性再発性膵炎では血清アミラーゼ値は一時的(一過性)に上昇しますが、罹患率が低く偶々健診で発見される例は稀ですし、膵がんでは高いことも低いこともあり、これで膵がんの有無を鑑別することも困難です。 あまり高くない値であっても、或いは正常値であってさえ膵臓病を否定することはできないので、血清アミラーゼ検査を集団健診に用いることの是非を再検討する必要があるようです。
 アミラーゼ値に男女差はないとされますが、図表(図表J1-7-18)に示す通り、65歳以上を除くすべての年齢層で、平均値は女性が男性を上回ります。有所見率も同様に60歳以上を除けば女性が男性を上回り、毎年同様の傾向ですので、この男女差は偶然とは言えません。膵臓病は女性より男性に多いですし、それと矛盾するような男女差の理由は不明ですが、膵臓のアミラーゼ分泌量や腎の排泄能(しきい値)に違いがあるせいかも知れません。40歳台以降では、受診者数が少ない70歳台以上を除いて、男女とも高年齢層ほど平均値と有所見率が上昇しますが、これは加齢に伴う腎臓のアミラーゼ排泄能低下が主因と考えられ、膵臓病の増勢を示すものではありません。

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