I.一般検査

13) 腹部超音波検査(図表J1-8-14

受診者数:41,677人(男性31,367人、女性10,310人)
有所見率:4.9%(男性4.6%、女性5.6%)

 全体として女性の方が異常出現率は高く、年齢階層別に見ると、特に40歳台から50歳台前半にかけて女性が男性を明らかに上回っています。男性では年齢とともに出現率が上昇しますが、女性では50歳台前半が最も高く7%。内訳(項目別所見内訳・図表6-7)に示すように、男性では脂肪肝が24.5%と群を抜いて高率で、次いで胆嚢ポリープ、腎嚢胞、肝嚢胞、腎結石が続きます。女性の1位は肝嚢胞で、次いで胆嚢ポリープ、脂肪肝、腎嚢胞、腎結石の順となっています。 肝嚢胞や腎嚢胞のほとんどは治療を要しません。胆嚢ポリープも大多数は小さくて良性のものですが、直径が1cm以上のものはがん化している恐れもありますので、精密検査が必要です。胆石や肝血管腫も比較的多く見られる所見です。健診で発見される胆石はほとんどが無症状で、大抵は直ちに治療を必要とせず、経過を観察することになります。肝血管腫も同様です。
 肝臓、胆嚢、膵臓、脾臓、腎臓、副腎の腫瘤性病変は、有所見率は低いものの悪性の恐れがあり、精密検査が必要です。なお、所見欄にある「コメットサイン」は胆嚢壁に接した小さな胆石の後方に生じる超音波の無音響陰影で、彗星(コメット)のように見えるのでこの名が付いています。放置して差し支えありません。デブリ(debris)は胆嚢の中に溜まった粘液などの浮遊物や沈殿物で、胆嚢の収縮機能が衰えるような状態で生じることがありますが、必ずしも病的ではありません。ベルタン柱(腎柱)は腎臓の皮質が内部の髄質に入り込んだ部分の名で、病的所見ではありませんが、これが目立つ場合には他の異常でないことを明らかにするために精密検査を要することがあります。

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