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日本消化器がん検診学会第41回近畿地方会 平成24年6月 滋賀県

ABC検診とバリウムによる胃透視撮影の比較検討

〇大倉光雄、今井新、八木孝明、寺田哲也、山本淳、谷口俊樹、礒島康史、阪上皖庸、藤田正憲、木村隆
財団法人 近畿健康管理センター

【背景】

 近年ABC検診は胃がんリスクのスクリーニングはもちろんのこと、住民検診などの「対策型検診」にもその有効性が評価されてきている。しかしながら職域の健康診断ではバリウムによる胃透視撮影(以下胃透視)が、漸減傾向にはあるものの、約15万人/年間(平成22年4月〜平成23年3月実績)程度と、今もなお高い受注状況にある。ABC検診の先行研究では胃内視鏡検査との比較調査研究が多く、今回我々はABC検診と胃透視との間にどのような特徴があるのか調査を試みた。

【方法】

 平成23年11月から平成24年2月に当財団で健康診断を受けた受診者のなかで、オプション検査(任意検査)としてABC検診を受診した502名のうち同日に胃透視を重複受診した169名について、1)ABC検診の群別の結果と胃透視の判定で要経過観察以上(有所見)の分布を2)胃透視の所見別にABC健診の群別の分布をそれぞれ調査した。

【結果】

 1)ABC検診の群別による胃透視の判定では、A群でも125件中有所見16件が該当し、B群C群でもn数は少ないが、特徴的な結果にはならなかった。2)胃透視の所見から見た場合では、要精密検査(良性/悪性鑑別が必要なもの)と判定された6件のうち胃ポリープと判定された4件のABC検診結果はすべてA群となった。また他の2件はともに胃潰瘍の疑いを判定され、1例は胃粘膜の乱れが、他の1例はニッシェ様が観察されたが、ABC検診ではともにB群となった。

表 ABC検診の群別の胃透視有所見割合
n=169 ピロリ菌検査
陰性(−) 陽性(+)
ペプシノゲン検査 陰性(−) A群12.8%
有所見16/総数125
B群10.3%
有所見3/総数29
陽性(+) D群0%
有所見0/総数1
C群7.1%
有所見1/総数14

【考察】

 今回の解析ではABC検診と胃透視の間に明確な相関は見られなかった。また胃ポリープにおいては結果からもABC検診ではその特性上検出されないことを考慮した上で、検診項目として受診対象の棲み分けや年齢対象モデルケース等を構築していきたいと考える。さらに4月末までのデータを解析し、学術集会当日に考察したい。
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